「医療機器メーカーへの就職は難しい」という声を耳にして、応募をためらっている就活生は少なくないでしょう。医療の知識や資格が必要そうな印象があり、人気も高いと聞くため、自分に目指せる業界なのか不安になるのは自然なことです。
ただ、難しさの中身を分けて見ていくと、業界全体が一律に狭き門というわけではなく、企業・職種・事業形態によって状況は大きく異なります。本記事では、難しいと言われる理由を整理したうえで、難易度の見方と、新卒が選考に向けてできる準備を解説します。
医療機器メーカーの就職が「難しい」と言われる3つの理由
医療機器メーカーの就職が難しいと言われる背景には、専門性のイメージ、人気企業への応募の集中、企業情報の少なさという3つの要因があります。ここでは、それぞれがどのように「難しそう」という印象につながっているのかを整理します。
専門知識や資格が必要というイメージが先行している
医療機器メーカーが難しいと言われる理由として、まず挙げられるのが、医療の専門知識や資格が必要というイメージです。医療機器は人の体に直接関わる製品であり、薬機法(医薬品医療機器等法)などの法規制のもとで厳格に管理されています。とくに人工呼吸器やペースメーカーのように命に直結する機器を扱う分野では、専門性の高さが求められるといわれます。
ただ、新卒採用に限って見ると状況は異なります。新卒はポテンシャルを重視して採用される傾向があり、入社時点の専門知識は前提とされにくいといわれます。医療系の学部でなくても、一から学んで知識を身につければ問題ないとされ、営業職を中心に文理を問わず採用している企業も少なくありません。イメージと実際を整理すると、次のとおりです。
| よくあるイメージ | 新卒採用での見方 |
|---|---|
| 専門知識がないと受からない | 入社後に学ぶ前提で、専門知識は問われにくい |
| 医療系の資格が必要 | 必須ではない。フクダ電子グループの営業職66名へのアンケートでは、約8割が入社前に資格なし |
| 理系でないと難しい | 営業職を中心に、文理を問わず採用する企業が多い |
人気企業に応募が集中し、倍率が高くなりやすい
2つ目の理由は、人気のある企業に応募が集中し、倍率が高くなりやすいことです。医療機器メーカーには、志望者が集まりやすい次のような魅力があります。
- 社会貢献性が高い
- 景気の影響を受けにくい
- 待遇の水準が高い傾向にある
- 高齢化を背景に、今後も需要の拡大が期待される
こうしたメリットの多さから、人気の業界であるがゆえに倍率が高くなりやすいと指摘されています。一方で、倍率を具体的な数字で把握するのは簡単ではありません。採用倍率は企業が詳しく公表していないことも多く、ネット上の数字は、プレエントリー数や採用人数などをもとに算出された推計値がほとんどです。同じ企業でもサイトによって算出方法が異なり、数字がそろわないことも珍しくありません。
数字はあくまで目安として捉え、志望企業がどのような採用を行っているかを一社ずつ確認しましょう。募集職種や採用人数も企業ごとに異なるため、同じ業界でも競争の激しさには差があります。志望者が多いことは、それだけ魅力の多い業界であることの表れでもあります。
BtoBで知名度が低く、企業探しや選考対策の情報が少ない
3つ目の理由は、情報の少なさです。医療機器メーカーは、病院やクリニックなどの医療機関を主な取引先とするBtoB(企業向け)の事業が中心です。一般の消費者が日常で名前を目にする機会は少なく、「医療機器メーカー」と聞いてすぐに思い浮かぶ企業名が少ないのではないでしょうか。とくに、次のような場面で情報不足を感じやすくなります。
- 企業名が思い浮かばず、応募先の候補を挙げにくい
- 取引先が医療機関中心で、仕事の実態が見えにくい
- 選考対策の情報が少なく、何を準備すべきか分かりにくい
業務の相手が医療機関中心のため、就活生が一人で十分な選考対策を進めるのは難しいという指摘もあります。情報が少ないまま選考に臨むと、準備が十分にできているのか不安になり、それが「難しい」という印象につながりやすくなります。裏を返せば、業界研究を丁寧に進めた分だけ準備の差が出やすい分野ともいえます。次の章以降では、難易度の見方と、情報不足を補う具体的な準備を紹介します。
実際の難易度は企業・職種・事業形態によって大きく変わる
「医療機器メーカーは難しい」とひとくくりにされがちですが、実際の難易度は、企業、職種、事業形態という3つの視点で見ると大きく異なります。応募先を考える前に、どの単位で難易度を捉えるべきかを整理しましょう。
業界全体ではなく、企業ごとに難易度を見る必要がある
医療機器メーカーの就職難易度は、業界全体で一律に語れるものではなく、企業ごとに大きく異なります。知名度が高く人気のある企業には応募が集まりやすく、国内トップクラスのメーカーや外資系の大手は、選考のハードルが高いといわれます。
目安として就職偏差値のランキングを目にすることもありますが、算出の基準がサイトごとに異なり、同じ企業でも数値や順位が一致しません。あくまで大まかな目安にとどめましょう。また、知名度が低い企業なら入りやすいとも言い切れません。応募者が少ない企業は倍率が下がる可能性があるという見方がある一方、入社しやすい企業はないという見方もあり、意見は分かれています。
「業界が難しいか」ではなく「志望企業がどの程度の競争率か」を個別に調べることが、無用な不安を減らします。次の点を企業ごとに確認しましょう。
- 採用人数
- 選考の流れ
- 過去の採用実績
- 募集職種と応募条件
職種によって求められる専門性が異なる
医療機器メーカーには、営業職のほかに、研究開発職、サービスエンジニア、事務職など、さまざまな職種があります。職種によって、求められる専門性や、応募できる学部の範囲は大きく変わります。
| 職種 | 主な仕事 | 応募のしやすさの目安 |
|---|---|---|
| 営業職 | 医療機関を訪問し、製品の提案や説明、導入後のフォローを行う | 文系・理系を問わず応募できる場合が多い |
| 研究開発職 | 医療機器の研究や設計を行う | 大学での専門知識が求められ、理系が中心 |
| サービスエンジニア | 導入先で機器の保守やメンテナンスを行う | 企業ごとに確認が必要 |
研究開発職のように製品の設計に関わる職種では、大学での専門知識が応募条件になることが多く、理系の学生が中心です。一方で、営業職をはじめとする職種は、文系・理系を問わず応募できる場合が多く、文系の学生にとっての入り口になります。「医療機器メーカーは理系でないと難しい」というイメージは、職種を限定すれば当てはまらないケースも多いといえます。
ただし、間口が広い職種ほど応募者も集まりやすいと考えられます。職種名だけで判断せず、どのような仕事で、どのような人物を求めているかを企業ごとに確認しましょう。
営業職の具体的な仕事内容については、下記のページでも紹介しているので、興味がある方はぜひご参考ください。
メーカーだけでなく、販売会社や商社も入口になる
「医療機器の営業」と一口にいっても、所属する会社の形態によって役割は異なります。大きく分けると、自社で開発・製造して販売するメーカー、複数のメーカーの製品を仕入れて医療機関に納める販売店(ディーラー)、海外メーカーの製品を輸入して販売する輸入商社の3つがあります。
| 会社の形態 | 扱う製品 | 営業の特徴 |
|---|---|---|
| メーカー | 自社で開発・製造した製品 | 自社製品を深く理解して提案する |
| 販売店(ディーラー) | 複数メーカーの製品 | 幅広い製品知識が求められる |
| 輸入商社 | 海外メーカーの製品 | 国内で独占的に扱う場合は、実態がメーカーに近い |
同じ「医療機器の営業」でも、扱う製品の範囲や求められる知識、営業のスタイルが異なります。応募先の形態を意識して企業を探すことが大切です。
また、メーカーグループのなかには、医療機関向けの販売や在宅医療向けのレンタルを、地域ごとの販売会社が担っている例もあります。たとえばフクダ電子グループでは、病院・クリニック向けの販売を「フクダ電子販売会社」、在宅医療向けのレンタルを「フクダライフテック」が担い、いずれも現地採用で原則として転居を伴う異動がありません。メーカーという枠だけで探すのではなく、事業の形態にも目を向けることで、応募先の選択肢は広がります。
選考では、専門知識よりも「なぜ医療機器・なぜその企業か」を言葉にできるかが問われやすい
新卒採用では、入社時点の専門知識が前提とされにくいぶん、選考では志望理由の説得力が重視されやすくなります。ここでは、志望理由を組み立てる際の考え方を、2つの視点から整理します。
「業界」「企業」「職種」の3段階で志望理由を整理する
医療機器メーカーの志望理由は、「なぜ医療機器メーカーなのか」「なぜその企業なのか」「入社後にどのように活躍したいか」という3つの段階に分けて整理すると、話の筋道が通りやすくなります。この3点をアピールすることが大切だとする解説は多く、企業研究にしっかり取り組んだうえで組み立てることが求められます。
| 段階 | 答えるべき問い | 整理のポイント |
|---|---|---|
| ① 業界 | なぜ医療機器メーカーか | 関心を持ったきっかけを、自分の経験と結びつける |
| ② 企業 | なぜその企業か | 製品の領域や事業の特徴を、他社と比べる |
| ③ 職種 | 入社後どう活躍したいか | 自分の強みを生かせる場面を示す |
とくに注意したいのが、2つ目の「なぜその企業か」です。業界に興味を持った理由は語れていても、企業単位の理由まで踏み込めている就活生は多くないといわれます。「社会貢献性が高いから」「安定しているから」といった理由だけでは、他の医療機器メーカーにも当てはまってしまい、面接官に「それなら他社でもよいのでは」と思われかねません。企業ごとの違いは、扱う製品の領域、医療機関向けか在宅向けかといった事業の特徴、働く場所や環境などを比べると見つけやすくなります。
「社会貢献したい」で終わらせず、自分の経験と結びつける
「人の役に立ちたい」「社会貢献性が高い」という思いは、多くの学生が挙げる志望理由です。この気持ちは大切ですが、それだけでは他の学生との差がつきにくくなります。医療機器業界を魅力的に感じたきっかけを、自分自身の具体的な経験と結びつけて語ることで、説得力が生まれます。
たとえば、家族が医療機器のお世話になった経験や、医療従事者の働く姿を見て関心を持った経験など、自分の言葉で語れる体験があると、面接官の印象に残りやすくなります。「助けられた」「魅力を感じた」といった曖昧な表現にとどまると、なぜそう思ったのかが伝わりません。伝え方の違いを比べると、次のとおりです。
| 伝わりにくい伝え方 | 伝わりやすい伝え方 |
|---|---|
| 「人の役に立ちたい」だけで終わる | きっかけとなった場面や体験まで説明する |
| 「魅力を感じた」など曖昧な表現 | 何を感じ、なぜ関心につながったかを述べる |
| 待遇や安定性だけを理由にする | 自分が企業にどう貢献できるかまで語る |
自分のメリットばかりを語ると、企業に何を提供できるのかが見えにくくなります。
本サイトでは先輩社員がどのようなきっかけでこの業界を志望したのかを、インタビュー記事で紹介しています。文系出身で知識ゼロから入社した社員の声も載っているため、志望理由を考えるヒントにしてください。
「難しい」を乗り越えるために、新卒がいまできる準備
難しさの主な原因は、企業や仕事の情報が少ないことと、志望理由が固まりにくいことです。ここでは、その2点を補うために、新卒が取り組める準備を3つ紹介します。
扱う製品領域と事業の特徴から企業を比べる
情報が少ない業界だからこそ、企業を比べる軸を持つことが重要です。医療機器といっても、人体への影響が比較的低いものから、生命維持に直結する高度なものまで範囲は幅広く、企業ごとに得意とする領域も異なります。志望動機では、企業が扱う製品の特徴と企業の特徴を組み合わせて考えることが役立つとされており、まずは取扱製品に着目して整理するのが有効です。企業を比べる軸は、たとえば次のとおりです。
| 比べる軸 | 見るポイント |
|---|---|
| 製品の領域 | 診断・検査、治療、在宅医療など、どこに強いか |
| 取引先 | 医療機関向けか、在宅の患者向けか |
| 事業の形態 | メーカー、販売会社、商社のどれか |
| 強み・注力分野 | 業界での立ち位置と、力を入れている取り組み |
整理した内容は、そのまま「なぜその企業なのか」を説明する材料になります。比べる軸が決まっていないと、どの企業も同じように見えてしまい、違いを言葉にしにくくなります。
説明会・OB訪問・インターンで仕事のイメージを補う
仕事の実態がつかみにくいという課題は、企業の採用イベントや人に会う機会を活用することで補えます。企業によってはインターンシップや座談会、説明会が用意されており、選考の前に仕事の内容や社風に触れられます。公式サイトや就活サイトだけでは分からない現場の雰囲気を知ることができ、社員の話し方や職場の空気も見ておくと、入社後の自分の姿を想像しやすくなります。
OB・OG訪問も有効な手段です。実際に医療機器メーカーで働く先輩に話を聞くことで、業界や企業の研究を一気に進められます。方法ごとに分かることを整理すると、次のとおりです。
| 方法 | 分かること |
|---|---|
| 説明会・座談会・インターンシップ | 仕事の内容、社風、社員の雰囲気 |
| OB・OG訪問 | やりがいや大変さ、1日の流れ、入社前後のギャップ |
| 社員インタビュー・一日紹介の記事 | 人に会う前に把握できる、仕事の具体的なイメージ |
人に会う機会がまだない場合は、社員インタビューや1日の流れを紹介した記事を読むだけでも、仕事のイメージはつかみやすくなります。
社員の一日の流れについては、下記でも紹介しているのでぜひご参考ください。
業界の動向を押さえ、面接での会話に生かす
医療機器の分野は技術の進歩が速く、業界の動向を語れると、主体的に調べていることが伝わりやすくなります。国内の医療機器市場は安定した成長が期待されており、押さえておきたい動向はたとえば次の3つです。
- 高齢化の進行
- 予防医療・在宅医療へのニーズの高まり
- AIやIoTを活用した次世代機器の開発
こうした動向を自分の言葉で語れると、入社後も新しい知識を吸収しながら働けそうだという印象につながります。たとえば、高齢化が進むなかで在宅医療の重要性が増していることを踏まえ、「患者さんが自宅で安心して過ごせるよう支える仕事に関わりたい」と自分の関心と結びつけるのもよいでしょう。
情報を詰め込みすぎる必要はありません。まずは高齢化や在宅医療といった大きな流れを押さえ、志望企業の事業とどう関係しているのかを一言で説明できれば十分です。学び続けることが前提の業界だからこそ、動向に関心を持つ姿勢そのものが大切になります。
「難しい」の正体を知って、企業ごとに情報を集めよう
医療機器メーカーの就職は、人気企業では競争が厳しく情報も少ないため、難しく感じられる面があります。しかし、難易度は企業・職種・事業形態で大きく変わり、新卒の選考では専門知識よりも志望理由の具体性が問われやすい業界です。ここまでの内容を整理すると、次のとおりです。
| 難しいと言われる理由 | 実際のところ |
|---|---|
| 専門知識や資格が必要そう | 新卒はポテンシャル重視で、入社後に学べる環境がある企業も多い |
| 人気で倍率が高そう | 難易度は企業・職種・事業形態によって異なる |
| 情報が少なく対策しにくい | 企業研究やOB・OG訪問などで補える |
「難しそう」という印象だけで判断せず、まずは企業ごとに情報を集めるところから始めてみましょう。仕事や働き方のイメージをさらに深めたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
